認知症の人へのケア 9大法則①記憶障害に関する法則

認知症の人へのケア 9大法則①記憶障害に関する法則

みなさん、こんばんは。崖っぷちのOT林です(@tyahan56)

前回ご紹介した認知症をよく理解するための9大法則・1原則は、認知症の人への適切なケアを行う上でとても参考になる法則です。
※認知症ライフパートナーのテキストと過去問を参照。

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認知症を理解する法則とは?

では、杉山孝博氏の提唱する、認知症を理解するための9大法則・1原則は以下の通りです。

9大法則1原則①記憶障害に関する法則
②症状の出現頻度に関する法則
③自己有利の法則
④まだら症状の法則
⑤感情残像の法則
⑥こだわりの法則
⑦作用・反作用の法則
⑧認知症症状の了解可能性に関する法則
⑨衰弱の進行に関する法則
1原則・・・介護に関する原則

今日は①記憶障害に関する法則についてです。
 

記憶障害に関する法則


記憶障害は、認知症の中核症状として必ず認められる症状です。記憶障害が認知症の一番の特徴であることはよく知られています。

健康な人でも物忘れがありますが、その場合は認知症の症状ではありません。正しくは良性健忘と表現され、病気によるものではないため記憶障害とはいいません。

認知症の記憶障害は、悪性健忘と言われています。この場合は病気によるものになります。
 

良性健忘と悪性健忘の違い

良性健忘単なる物忘れ
悪性健忘認知症の症状

記憶障害の3つの特徴

認知症の記憶障害には、次の3つの特徴が認めれているそうです。
 

記憶障害の3つの特徴

①記銘力低下
②全体記憶の障害
③記憶の逆行性喪失

記憶になければ、その人にとって事実ではない」ことを心得ておく必要があります。例えば見知らぬ人から「貸した金を返せ!」と言われても、当人が記憶になければ「金を借りた」ことを決して認めないのです。

周りの者にとっては事実であっても、本人は記憶障害のために事実ではないことが認知症では日常的であることを覚えておくといいですね。

以下、3の特徴を一つずつ簡単にご説明いたします。

1.記銘力低下

ひどい物忘れ」とも言います。話したり、聞いたり、行ったりしたこと、つまり体験したことをすぐに思い出す力を「記銘力」といいます。
認知症が始まると、まず記銘力が低下します。そう、ひどい物忘れが起こるわけですね。

同じことを何度も繰り返しますが、これはその度に忘れてしまい、常に初めてのつもりで相手に対して働きかけています。丁寧に説明し、認知症の人が「わかったよ」と返答しても安心できないのです。何度も繰り返し説明すると、当人からすれば「この人はうるさい人だ!」と受け取られる場合もあります。

2.全体記憶の障害

これは出来事をごっそり忘れてしまうことを言います。例えば、デイサービスから帰ってきた当人に、家族が「今日は何をしてきたの?」と尋ねても、「家にいたよ」と真面目な顔をして答える場合があります。

つまりデイサービスに行ったこと全体をキレイに忘れてしまっているのです。

3.記憶の逆行性喪失

これは蓄積されたこれまでの記憶が、現在から過去にさかのぼって失われていく現象をいいます。

「その人にとっての現在」は、最後に残った記憶の時点になるということですね。記憶の時点さえ分かれば、当人の置かれている世界が分かり、ケアの対応がしやすくなると思います。

管理人の体験ですが、こんな方(90代女性)がいました。普段はじっとしているのに、ある日、車椅子から立ち上がりどこかに行こうとしていました。あまり落ち着かず、ず~っとしゃべり続けていたんですよね、多弁傾向でやや不穏状態でした。

そこで、私は次のように尋ねてみました。

good

○○さん、今お幾つでしたっけ?

利用者女性困顔

43よ!


ということは、当人は43歳という記憶の世界にいることが分かります。43歳ですから、仕事や育児に忙しかったはずだと想像できます。

good

あ、そうでしたね。失礼しました。ところで、これからどこに行かれるんですか?

利用者女性困顔

早く○○ちゃん(当人の息子さん)を迎えに行って夕飯を作らないと!

…と興奮気味で車椅子から立ち上がったのはそのためでした。当人は育児や家事に追われていた時点に戻っていたということが分かります。

認知症の人は、現在の世界を認めない傾向があるようです。だから「今は今だよ!」と説得しようとする人を、自分をペテンにかけようとする敵だと見なす場合もあります。

セクハラをする男性利用者っていませんか?性的異常行動と呼ばれる行動も、記憶の逆行性喪失を理解すれば納得できると思います。

うちの施設にセクハラする男性利用者がいました。80代の方ですが、これは80代の行動ではなく、40~50代の壮年の性的行動と捉え直してみれば異常とは思えなくなります。

以上が、記憶障害の3つの特徴でした。

次回は、9大法則の②症状の出現頻度に関する法則について紹介したいと思います。
 
最後までお読み下さりありがとうございました。
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