みなさん、こんばんは。崖っぷちのOT林です。
ちと古い情報で恐縮ですが、ある1冊の本を懸命に読んだ記憶がありました。それは「痴呆介護」という痴呆性高齢者ケア専門情報誌です。
※当時、まだ”痴呆”という名称でした。なにせ2001年の時の情報誌ですからね。
この情報誌の中の「こんなとき、どうする?」が大変勉強になった記憶がありました。
そこで、みなさんだったら、どう対応を取るのか、試してみましょう。
ここでは、認知症の人を説得する時の対応とその得点についてお伝えします。
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自分だったら、認知症の人をどう説得する?
まず、以下の事例をお読みください。
症例 77歳の女性。アルツハイマー型認知症(軽度)
最近、物忘れが多くて心配になり、家族が病院へ勧めるが、「私はどこも悪くない!物忘れなんかないわ。年とれば少し位忘れるわ。ボケ扱いするな!」と怒る。
こんなとき、自分だったらどうしますか?
以下の設問で良いと思われるものを選んでください(複数可)
1.こちらも負けないように強気で対応する。
2.とことん話を聞いてやり、静かになったらもう一度ゆっくり話す。
3.もっと上手に説得する言葉を考えて話す。
4.優しく真実を話して、家族の気持ちを理解てもらうようにする。
5.「たまには健康診断しないと」と嘘を言って連れて行く。
6.どこかに遊びに行くような振りをして病院に車をつける。
7.心からの愛情を持って、心の底から愛情あふれる言葉をかけて対応する。
さあ、どの設問を選ぶといいのでしょうか?
あなたが選んだのは何点?
どれを選んだかによって、あなたの得点(100満点)が分かりますよ?
1を選んだ人…5点!
【解説】本人は自身の病気についての自覚がないから、自分が物忘れをして周囲の人達に迷惑をかけているということを理解していない。したがって、強気で対応すると、本人はさらに混乱したり抑うつ的になったりと問題行動がますます発生してしまう。
2を選んだ人…55点!
【解説】愛情のある対応で、話を聞いてあげることで穏やかになることが多い。否定しない、無視しない、指摘しない、とことん聞き役になる、それが認知症の人の介護では基本となる介護姿勢である。
ただ「もう一度ゆっくり話しをする」場合、同じ話しをすれば同じ反応が起こる可能性が高い。説得すれば理解してくれるという思いは、肉親であればあるほど当然起こってくる。
本人が自覚していないことに対して「説明して説得させる」とか「理解させて誘導する」という行為は極めて困難。
3を選んだ人…30点!
【解説】「説得する」とか「理論的に話をして客観的に正しいことを理解させて行動させる」というのは難しい。説得する言葉を探すのではなく、「本人が満足するような言葉や理由を探す」という風に変えると良い。
4を選んだ人…55点!
【解説】真実を話すということは、「あなたは最近物忘れがヒドイからボケてるかも?心配だから病院で診てもらおう」というような趣旨を話すことになる。それが本人を落胆、混乱、抑うつ状態にさせ、被害妄想を起こさせて問題行動を引き起こす可能性がある。真実を伝える必要はない。「あなたのことが心配だ」という家族の気持ちを伝えるようにする。
5を選んだ人…95点!
【解説】「年とったからいくら健康でも心配だから、ちょうど健康診断に来てくれと役場から通知も来たんだ。だから私も一緒に健康診断に行くので、一緒に来てくれないかな?」という言い回しで本人が納得して専門医のいる病院に行ってくれる。このような「嘘」や「偽り」でも本人がより快適で幸せな生活を送れるのであれば、認知症介護の一つの有効な技術として活用すべき。
6を選んだ人…95点!
【解説】「息子が珍しく今日はドライブでも行こうと言ってくれた」と思ってくれたらチャンス。アルツハイマー型認知症であれば何十分後に、あるいは1時間か2時間して病院に着いたとして、「あれ?今日はどうして出掛けていたのか?」その理由さえ忘れることが多い。病院に着いたら「今日は私が健康診断で診てもらうから、おばあちゃんもついでに健康診断してもらおう」と本人が納得しそうな理由を何か言えばOK。
7を選んだ人…80点!
【解説】素晴らしい接し方だが、それでも80点。愛情をもって接するのは認知症介護の姿勢では基本的で、問題行動を減らしてくれる。
しかし、人はいつ、どんな時も何があっても「穏やかに、怒らずに、にこやかに」認知症介護ができるのか?家族が介護している場合、そう簡単にはいかない。血縁者であればあるほどイライラしたり怒ったり注意したりしてしまう。
そこで必要なのが、認知症介護の知識と技術。そんな知識と技術があれば本物の愛情は80%くらいでも十分上手な介護ができるはず。アマチュアは100%の愛情でぶつかるに対して、プロフェッショナルは十分な認知症介護の知識と技術と60%以上の愛情で対処するというような違い。
どうでしたか?
久しぶりにやったら、私は5,6,7を選択しました。学生の時は確か2,4を選択したと記憶があります。
なかなか病院に行ってくれない認知症の人がいたら、設問5のような言い回しで話しかけてはどうでしょうか?