当施設におけるパワーリハビリテーションの現状と課題~COPMの活用~
みなさん、こんばんは。崖っぷちのOT林です(@tyahan56)
ちょっと過去の話で恐縮ですが、6年前に当施設で事前に研究発表し、その後、某グループによる学会でも発表しました。
※発表は同僚のOTにお願いしました。私は法事の関係で発表会に出席できず。代わりに資料作成に携わりました。
テーマは、
「当施設におけるパワーリハビリテーションの現状と課題~COPMの活用~」
このテーマを選んだのは?
うちの施設のウリ(?)とも言える3台のマシーンが配置しているので、CGT(包括的高齢者運動トレーニング)を長いこと実践してきたのですが、マシーンに参加されている利用者の満足度を確認したくて、このテーマにしたのです。
ここでは、当施設におけるパワーリハビリテーションの現状と課題について紹介したいと思います。マシーンを取り入れているのでしたらご参考になれば幸いです。
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現状のパワーリハビリに満足してるか?
もう長く実践したことは間違いないのですが、残念ながら事前・事後評価を実施していません。
マニュアルでは、体力やADLの評価指標として膝伸展筋力、股屈曲筋力、開眼片足立ち時間、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed up&go test、最大歩行速度、普通歩行速度、バーサルインデックスなどの評価を行うことになっているのですが、現状では実践できておらず、どうしてもダラダラ感があったわけです。
そこで、マシーンを利用している対象者は果たして現状の内容に満足しているのだろうか?を調査しました。
以下が抄録です。
抄録
1.はじめに
平成17年に高齢者用トレーニング機器を導入したが、対象者が当機器利用に対し、現行の内容で満足しているかを把握していない現状に気付いた。そこで現行の当機器に対する利用者の動向を調査し、今後の改善や見直す機会を得られたのでここに報告する。
2.方法
①対象者:デイケア利用者(60名±8.7歳)。
②方法:カナダ作業遂行測定(以下COPM)を利用した3項目を質問聴取。
③分析:
・データの平均値と分布図を作成した。
・COPMで得られたデータ(遂行度×満足度)を4象限にプロットした。
・意見・理由を肯定的意見と否定的意見に分類し割合を算出した。
補足②の方法ですが、OTの人ならご存知の「COPM」を利用者さんが分かりやすいようにアレンジしました。3つの質問に対して、1~10のうち該当する番号を囲んでもらう、COPM独自の方法です。
※3項目の質問内容とは、下画像の通りです。
COPMの流れとしては、以下の3段階で実施しました。
・第一段階 当機器について重要度を10段階で評定。
・第二段階 遂行度と満足度を10段階で評定。
・第三段階 全体の遂行スコアと満足スコアを計算。
そうすると課題点が浮かび上がり、優先的にどの点を改善すればいいのかをできるわけですね。それが4象限による調査の分析です。
この分析手法は顧客満足度調査としてよく使われています。私は、この手法をヒントに手を加えてみました。
3.結果
① COPMの平均値は、次の通り。
・重要度7.6±1.8
・遂行度7.8±1.9
・満足度8±1.8
※この上表のデータを下画像のようにグラフ化にしました↓
※さらに遂行度を縦軸に、満足度を横軸にとり各平均値を交点とし、各データを4象限に分類したのが、下画像です↓
※4象限の各領域割合では、下画像の通りです↓
つまり…、
・遂行度高×満足度高:45%
・遂行度高×満足度低:17%
・遂行度低×満足度高:15%
・遂行度低×満足度低:23%
…という結果になりました。
右上の領域の遂行度と満足度が共に高いというのは、現行のパワリハ内容に満足してますよという風に捉えることができます。
それ以外の領域は少なからず改善の余地があるということになります。
② 肯定的意見と否定的意見の分類
肯定的意見は「運動になる」「自分でできる」「満足している」が多数。
否定的意見が「効果が不明」「指導が欲しい」「負荷を上げて欲しい」などが挙がった。
※重要度に対する意見分類は、下画像の通りです↓
※遂行度に対する意見分類は、下画像の通りです↓
※満足度に対する意見分類は、下画像の通りです↓
4.考察
COPM結果をプロット図による可視化をしたことで、当機器に対しての相対的なデータを明確に示すことができた。
「遂行度×満足度」では平均値以上である方が45%と約半数の方が現行内容に良い印象を持っていることが確認できた。
しかし意見項目では、重要と満足に対する肯定的意見が半数以上であるのに対し、遂行に対する否定的意見では「上手にできない」「指導や注意点を教えて欲しい」など、その他で「無回答・わからない」という意見が多数聞かれた。
これは現行内容がご自身でできてるのか、正しいものなのかなど、ご自身では判断がつかないことが考えられる。
つまり実施状況に対する提供者側の評価とその伝達を求めていることが考えられる。
Lawは「作業遂行は遂行そのものと遂行に対する満足を含む」1)と述べており、今後より良いパワーリハビリテーションを提供するためには、遂行状況や満足状況の把握・対応が重要である。
同時にパワーリハビリテーションの重要性の増進も図っていく必要がある。
今回聴取された3つの項目に対する否定的意見を参照に、パワーリハビリテーションや当機器の特徴や効果などの説明は十分であるのか、必要性や実施状況などに関して提供者側と対象者側で密な連携で実施しているのかどうか、今後具体的な対策を図っていく必要があると思われる。
5.おわりに
これらの改善をすすめ、再度COPMを測定し、全体スコア・平均値の向上が図れれば、利用者にとって現在よりも、より良いパワーリハビリテーションを提供できると思われる。
また今回COPM測定を活用する上で、対象者の評定や見解が捉えやすく、問題点の抽出ができた。
今後のリハビリテーションでの活用を図っていきたい。
以上が抄録でした。
考察は、本当に頭の使う作業でした…。同僚のOTと話し合った結果、こういう考察内容に至りました。
さいごに COPMを使ってみて
今回のCOPMを活用したことで、聴取された否定的意見をもとに、遂行度・満足度が共に【高い】領域に持っていけるように改善すれば、より良いパワーリハビリテーションを提供できるのではないかと思いました。
そして、全体スコアを上げていくための改善策を講じた結果をCOPMで再測定し、スコアの差異や改善がどこまで認められるか…いつかは再調査してみたいですね。
COPMを使いようによっては役に立つと思います。
ある種に対する利用者の動向を調査したり、レクリエーションの内容やリハビリプログラム内容の継続可否などの効果測定を知るのにCOPMが適しているのはないでしょうか?
例えば、各種の体操に対してCOPMを行なうとします。
これまでに行なっていた棒体操やタオル体操、セラバンド体操など何種類かある体操に対し、COPMで利用者がどの体操を望んでいるのか?生活リハビリの向上に結びつくのはどの体操なのか?利用者の動向を確認できるかと思います。
利用者の望む傾向を確認した上、今後は利用者のニードにマッチした体操を行うことで、より満足度や遂行度の向上につながるかもしれませんね。
最後までお読み下さりありがとうございました。
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