アクティビティ活動を行う上で”没我性”と”共有生”がポイント
みなさん、こんばんは。崖っぷちのOT林です(@tyahan56)
以前にも紹介しましたが、管理人の好きな言葉を紹介します。
自然の最も優れた医師であり、
それが人間の幸福についての条件である
by Galen
最近、割り箸モザイクに取り組む利用者の数が増え、リハビリ実施時間が過ぎているにもかかわらず、居残り(?)で頑張ってもらっています。以前、モザイラー(割り箸モザイクに取り組む人のこと)たちが意欲的に取り組む姿を見て、「なぜ、こんなに頑張る?割り箸モザイクが魅力だから?」という疑問が浮かび上がり、アクティビティ(手作業)に関する文献を探したことがあります。
ここでは、アクティビティ活動における”没我性”と”共有生”についてお伝えします。
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アクティビティに集中して取り組めるのはなぜ?
今回、参考にしたのは、山根寛著ら「ひとと作業・作業活動」という文献。これは学生時代に講師が推奨する本だと聞き、早速コピーして製本にしたのですが、あまり読みませんでした!
現場に出てから読むようになり、大変参考になったのを今でも覚えています。
文献によると、「ひとが作業する」には以下のような要素が含まれています。
・意志が働く-能動性→能動、中枢神経系の使用
・からだを使う-身体性→心身諸機能の賦活、快の衝動、感覚入力、リズム、身体エネルギーの使用
・素材、道具を用いる-操作性→自己能力の現実検討、有能感の現実的実現
・目的を果たす、導かれる-目的性→注意力、集中力、能動
・我を忘れる-没我性→楽しみや苦しみをすべてを超え癒す力
「作業・作業活動やその結果」については、以下の通りです。
・価値、意味をともなう-意味性→モチベーション、意欲、自己愛の充足
・過程、結果があきらか-具体性→現実検討、表現
・気持ちがあらわれる-投影性→非言語的メッセージ、理解、共感、カタルシス、自己洞察
文献にはこのように記載してあり、割り箸モザイクという作業活動を改めて分析すると、 間違いなく上記のような特性・要素が含まれていました。
なかでもポイントとなるのが、没我性ではないでしょうか?とにかく、モザイラーたちは我を忘れるほど、集中して取り組んでもらっていることが目に見えて分かります。
割り箸モザイク以外のアクティビティを行なう人の心身に何が起こるのか、どのような変化が見られるのかといった、アクティビティの持つ「特性」と「人と作業」の関わりをさまざまな視点から分析していきたいですね。
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「没我性」というキーワードがポイント
管理人は以前から没我性というワードを意識するようにしています。没我性というのは「我を忘れるほど、何かを夢中して行う」ことを言います。
アクティビティに取り組む時に我を忘れるほど、夢中になる利用者たちがいます。私たちも何かを夢中して、時間を忘れ、我を忘れて無我の中にいるという経験は誰しも一度位はあると思います。身近な例を挙げるとしたら、スマホのゲームかな?(スマホ歩きしながらゲームをやる学生やビジネスマンが多いですね…)
ですが、我を忘れるほどの夢中になるのは楽しい時ばかりではありません。嫌なことがあってアクティビティ活動をしていると、いつの間にか嫌なことが薄れて気持ちが楽になってきた!なんてこともあるでしょう。
また文献には次のように記載しています。
作業に必要な目的に沿った行為を行うことによる意識の集中(①)、作業活動に伴った身体に生じる心地よいリズム(②)や感覚刺激、自分の行為により何かがなされていく達成感(③)、自分が道具や素材をうまく扱うことによる有能感(③)、その他にも作業活動に伴うさまざまな要素が絡み合ってのことだろう。没我性は、ひとが生まれ、育ち、日々の生活を送る中で、どうにもならない悲しみや痛みを超える力を秘め、ひとを癒す。遊び・余暇的なものに限らずすべての作業活動に含まれている力である。(「ひとと作業・作業活動」p56)
心から楽しんでる?
①の意識の集中は、よほど興味や関心がないとアクティビティに取り組めないと思います。本当にこのアクティビティに対して行なうことに意義があるのかをしっかり観察することが重要です。心から楽しんでいるのであれば、ドーパミン系が活動して前頭葉が活性化されると思います。
セロトニンの活性化
②の心地よいリズムは、本当にあると思います。リズムよく行なうことで、癒しのホルモンであるセロトニンが活性化され、 イライラを鎮めてくれるだろうと思います。
※参照記事→アクティビティはなぜ落ち着く?セロトニンの活性化
③の達成感と有能感は、自分なりに工夫していく、つまり自分流の作業活動を行うことで得られる感情的要素ではないでしょうか?
※参照記事→アクティビティで廃用手が補助手に!工夫してこそ楽しさが倍増!の記事へ
アクティビティには共有性が欠かせない!
もう一つ、重要なキーワードがあります。それが共有性。
割り箸モザイクのメンバーの一人が他の利用者に「割り箸モザイクが楽しいよ。良かったら貴方もやってみない?」と声かけてくれたおかげで、私の担当ではない利用者も割り箸モザイク活動に参加してくださったこともあります。いわゆる口コミってやつです。
割り箸モザイクを取り入れて10年近く経ちますが、完全ではないけど、私の理想とするアクティビティに近づいてきたように感じます。
↓
2人目の新規の人が参入
↓
一番最初に参入した人が新規の人に割り箸モザイクを指導
↓
3人目の新規の人が参入
↓
2番目の先輩の人が新規の人に指導
このように繰り返して5人に増えました。このことは、共有体験を活かすコミュニケーションになっていると思います。
共有体験を活かすコミュニケーション
次の文献のように、共有性には深い意味が込められています。
作業そのものが具体的な目的を持っているため、お互いの役割、相互の関係の設定が容易で、個々の力動が作業活動にともなう行為や結果として具体的に現れやすい。
そのため「いまここで」の働きかけが容易になる。Yalomらの集団治療因子でみれば、普遍的体験、情報の提供、愛他性、社会適応技術の学習、模倣学習などが作業活動を共に行なうことに期待できる効果といえよう。
普遍的体験とは、大きな孤独や悲哀のなかにある者は、自分だけが特別に受容できない問題や衝動を抱えていると思い込んでいるかもしれません。そうした人が他者との関わりで、自分の問題は自分だけでなく、他の人も同じような苦しみや問題を持っているということを認識し安心感を体験することをいいます。
実際に現場でも、アクティビティのメンバーの悩みを他のメンバーが聞いてあげたり助言を与えたりしていました。
愛他性とは、他者のために役立つという体験により、自分を受け入れる感情を持てたり、自尊心を尊重したり、自己評価が高まることをいいます。例えば、ベテランのモザイク経験者が未経験者に割り箸の作り方を教えるという体験ですね。
さいごに
メンバーたちがアクティビティに集中して取り組んで欲しいのなら、アクティビティ導入前に、まずアクティビティを分析することた大切。その際のキーワードとなるのが、没我性と共有性。これらのキーワードを優先的に意識したアクティビティを導入したほうがよさそうですね。